「ひとり親」支援について思うこと。

最近、インターネット上で「ひとり親を救え!」というキャンペーンが話題を呼んでいます。

●ひとり親を救え!プロジェクト

http://save-singleparent.jp/

 

病児保育で有名な社会起業家の駒崎弘樹さんと、

実際にひとり親家庭で育った評論家の常見陽平さんとが

ツイッター上で論争?をしたのを契機に注目が集まり、多くの著名人がご自身のブログなどで見解を述べておられます。

●「ひとり親を救え!プロジェクト」を端に発した常見氏と駒崎氏の論争まとめ

http://togetter.com/li/891659

●「ひとり親を救え!」運動はなぜ炎上したのか

http://toyokeizai.net/articles/-/90574

 

両氏が仰っていることは、どちらも「なるほどなぁ」と思います。

ただ、この論争を知る前、当キャンペーンを目にしたときに感じた違和感というか、

率直な感想を書いておきたいと思います。

元ひとり親の一人として、当事者としての一意見です。

 

プロジェクトの概要にもありますが、

ひとり親家庭には所得に応じて、毎月、「児童扶養手当」が支給されます。

第一子には月額最高42,000円。第二子以降は、一人あたり5,000円の加算です。

私は母一人、子一人の母子家庭でした。

ひとり親になった当初は、子どもはまだ生後数か月。

それまでに積んできたキャリアも断念し、海外でしていた仕事も辞めて帰国。

社会保障もなく、収入もない・・・。

これからどうしよう。。。という状況でした(遠い目)。

そんなときの児童扶養手当は、本当に本当にありがたかったです。

あと、お金がなくても子どもは病気になるので、乳幼児の医療費助成にも本当に感謝しました。

日本は福祉が充実しているすばらしい国だ!って。

 

で、日本で生活を立て直そうと、就職に向けて準備を始めました。

ひとり親支援をしている公的機関のホームページに「就労相談を受けています」とあったので

子どもを抱っこして訪ねたけど、なーんか冷たい感じだったり。

もういいや!自力で探すし!!まずは保育園だ!!

って役所に相談に行っても、現実は例によって待機児童の嵐でした。

そのときに役所から受けた説明は、今でもよく覚えています。

 

役所「あなたはいま働いていないし、認可への入園の優先順位は下がり、入園は難しいと思います。まずはお子さんを無認可園へ預けて就職してから、認可園へ申し込んでください」

私 「でも、無認可園って高いですよね?私、働いてないし、毎月そんな4~5万円も、お金を払えません」

役所「児童扶養手当をもらっていますよね?とりあえずはそれで払っていったらいいんじゃないですか?」

私 「それは最後の手段として考えます。まずは、とりあえずどこでもいいので、空いている認可園を教えてください。本当に働かないと、生活もできないんです。。」

役所「保育園の空き状況は、こちらでは教えられません。ご自身で、園に電話して調べてください」

 

という内容でした。

健康で、働く意欲もあるのに、働けない。

悔しさと悲しさ。どうしたらいいかわからなくて、どこに相談したらいいかもわからなくて。

だから、市長へ手紙を書きました(笑)

「ひとり親家庭の者です。働きたいけど、条件的に保育園への入園が厳しいと説明を受けました。

毎月いただいている児童扶養手当は本当にありがたいです。しかし、月40,000円では生活ができません。

経済的に自立したいと心から思っています。

毎月40,000円いただくよりも、自立に向けた支援やサポートを受けられたらと願います」

という内容に、役所とのやりとり内容も添えて。

そうしたらですね、数日後に役所から電話がかかってきて、空いている保育園を教えてくれて、

そこに入園することができました。そして、仕事も見つかりました。

泣き寝入りせずに、声をあげることって大事ですね。でも、そんな不公平でいいのか。

 

そういう経緯があったので、今回のキャンペーンについても、

「5,000円を10,000円に増額するよりも、経済的自立をサポートするような取り組みにお金を使ってほしいなぁ」

と思うのです。

10万円増額します、だったら話は別だけど、数千円、1万円の差って微妙で、

その変更のために事務的コストの人件費とか通信費とかで、膨大な税金が消えていくじゃないですか。

不正受給も多いなか、本当に困っている人、自立したいと もがいている人に、

増額したところで、必要な支援を本当に必要としている人たちのところに届くの?

そのコストを使って、他にどんな支援がありうるか?

という議論が必要なんだと思う。

 

あと、常見さんが発信していたように、「ひとり親家庭=貧困」というイメージは

当事者を傷つけると思います。

私も「ひとり親」というだけで、「子どもが不憫ねぇ」とか「生活保護を受けたら?」とか、

同情の目をもって言われたりしましたが・・・

「ひとり親」なんて、ただの環境であって、幸福感とは別の話なのに。

でも、ひとり親は、経済活動も家事も育児も、なんでも一人でこなさないといけない。

とくに子どもが小さいうちは、息抜きする時間なんてまったくなくて、体力的・物理的に大変でした。

「貧困」に同情するよりも、その現実に具体的に手をかしてよっ!!

と思います。

 

あと、本筋からずれますが、なんだかなぁと思うのは、

「お付き合いしている人ができたら、児童扶養手当の支給はできませんので、申告してくださいね。黙っていると不正受給になります」

というルール。

お付き合い=経済的援助なわけないだろうに、なんか上から目線のルールなんだよなぁ。

 

ということで今回のキャンペーン、いまいちピンとこなかったんですが、

アルフレッド・アドラーの名言でしめたいと思います。

行動に問題があるとしても、その背後にある動機や目的は、必ずや「善」である。