小さな命のはなし① 胎児胸水

昨年末に仮死状態で生まれた息子は、健やかに日々を過ごしています。

たまーに疲れるのか、ミルクを飲むのを突如中断して、

伏し目がちに大きなため息をつく姿が、なんとも神々しいです。

そんな彼はお腹の中にいるとき、

出生と同時に治療を始めた難病とは全く別の疾患を抱えていました。

命に関わる病気を二つも乗り越えた彼の、生きようとする本能に多くの気づきがありました。

 

胎児って何者だろう。

 

子どもの医療費助成は充実している日本。

しかし、胎児は子どもとは見做されていません。

ショッキングなことに、「治療はするけれど患者とは見做されない」のです。

死に至る病気があったとしても、基本的には健康保険適用外となります。

胎児の存在は人の始期とは見做されないのでしょうか?

日本では、民法が3条に、「私権の享有は、出生に始まる」との規定をおいているが、どういう状況を「出生」と定義し人としての始期とするかについて、日本の法律は、特に明確な定義をしていない。

法律上では生まれていない胎児には権利能力が認められていないので、

胎児の人権をどう捉えるかについては、議論がわかれているようです。

でも、親になろうとする人にとっては、胎児も大事な子どもに変わりありません。

胎児に異常が見つかったとき、治療しなければ命に関わるようなとき、

子どもを産み育てようとする親個人に負荷がかかり過ぎている現状があります。

その負担を社会全体でフォローすることで、救われる命はもっとあるように思うのです。

 

まずは胎児胸水のはなし。

妊娠がわかった6月初め。

その時の私が何を思ったのか、近所の産院ではなく、

最初から周産期母子医療センターをもつ総合病院にかかりました。

理由は、「なんとなく」という直感だけ。

今になってみると、直感は大事だなーとつくづく思います。

思い返せば、つわりで相当つらく、仕事もバタついていた時期で、

毎日が不機嫌きわまりなく、周りに迷惑かけていたなぁ。。。スミマセン。

 

で、喜んだのもほんの束の間。

それから2週間後、妊娠12週のとき、最初の異常が見つかりました。

胎児胸水です。

先天性乳び胸といわれ胎児期に胸腔内(肺の外側)にリンパ液が漏れだしてしまう病気です。頻度は約1万出生に1例といわれています。

胎児胸水は一部に自然に良くなる場合がありますが、良くならずに大量に貯まってしまうと心臓を圧迫して、胎児水腫になります。また肺が長期間圧迫されると肺の発育が阻害され予後は不良です。

エコーでみると、胎児の胸部に黒い空洞=大量の胸水があるのがわかります。

今後どうなるのか?担当医から説明されたのは以下の4つでした。

①自然に良くなり、生まれる。

②悪化して胎児死亡。

③染色体異常の可能性(ダウン症など)

④悪化しないけど胸水がずっとあり続けて、肺の成熟を妨げる。胎児治療が必要。

 

一カ月以内にお腹の中で亡くなってしまう可能性もあると告げられました。

いつ悲しいことになるかわからない。

そんな状況だったので、妊娠を隠すつもりはないけど、人に伝えるのも抵抗がありーの。

 

1万出生に1例の病気って。。。

そんな確率が当たるなんて、なんで宝くじじゃなかったんだろう。。。

なんてことを考えながら、どう受け止めていいのか分からず、苦悩の日々が始まるのです。