我が家のちっちゃい皇帝はだいたい2時頃に起きて、そのまま1時間ほど遊んで就寝。
そのころには私の眠気はとっくに覚めているので、明け方までは書き物タイム。
最近、突然パートナーが
「子育てって、たった一人のための保育所を家庭内でやってるようなもんだよなぁ。夫婦で保育事業を共同経営するって思ったら楽しくない?!」
と言い出して、それに私も
「いいね!それ!ビジョンを達成したら、第二の人生も送れるものね!」
と乗ったのですが、
「共同経営者っていうより、新入社員だと思ってるんだけどね・・・」
と内心つっこんでみる私には優しさが足りないのでしょうか。
閑話休題。前回のはなしの続きです。
出生前診断
胸水の原因を探るために、検査をすることになりました。
原因はいろいろと考えられるようで、
感染症が誘発することもあるため、採血検査を何度か実施。
注射キライなのに週1~2回は採血していたので、
意識を体から切り離すトレーニングだと思って耐え抜きます。
それから、染色体異常の有無を確かめるため、羊水検査を勧められました。
染色体異常が原因だと、心疾患など他の合併症もあるし、
場合によっては母体へのリスクも考えられます。
羊水検査は、子宮に長い針を刺して羊水を少量取り出し、
羊水中の物質や胎児の細胞をもとに、染色体や遺伝子異常の有無を調べるものです。
妊娠16週以降の時期に実施され、検査から結果が出るまで、2~3週間かかります。
ここで問題になってくるのが、法律上、
人工妊娠中絶は22週までしか認められていないということです。
染色体異常や、妊娠の継続で母体への危険が伴う場合、
妊娠の継続を人為的に諦めるかどうか、22週までに判断しないといけません。
なので、羊水検査は16週以降、なるべく早い段階での実施が求められます。
羊水検査による流産のリスクが300分の1。
検査のお値段、2日間の入院で約15万円也。
妊娠は病気ではないという理屈から、妊娠にかかる受診は健康保険適用外です。
通常の妊婦健診であれば、
自治体が発行している妊婦健診受診票(14回分)で無料受診できるのですが、
こういうトラブルを抱えてしまうと、14回の決められた受診内容だけでは済まないので
それ以外は全額自己負担になってしまいます。
この時期、通常であれば月に1回の健診でいいところを、週1~2回の頻度で通っていました。
その分の採血やエコーも保険がきかないので、毎回5~6千円払うことに。
「妊娠・出産はお金がかかる」って、こういう落とし穴もあったのか。。。
注射だけでなく、経済的にもイタイ。。。
それに、フルタイムで勤めていたりしたら、週1~2回の検査に行くこと自体、
気を遣いますし、時間的にも結構な負担になりますよね。
選択肢を増やすことは、苦悩にもつながる。
次回に詳しく書きますが、同時に、胎児治療を受けることを勧められていました。
まず悩んだのが、「羊水検査を受ける必要性が本当にあるのか?」ということです。
仮に染色体異常があったとしても、命を諦めるという選択は自分にできないように感じました。
私は中絶が悪だとは思いません。
今の日本では、その選択が許されている。
人が生きるのには、それぞれの事情があります。
他人がその一側面だけを見て、一般論で倫理的に善悪を語ることは欺瞞だと考えます。
倫理や道徳というのは、最近になって作られた社会ルールだったりしますから。
歴史を研究していると、そう感じます。
私が悩んだのは、倫理的なことではなく、
人工死産は私にとって想像もつかない精神的苦痛を味わうことになるんじゃないか、
という未知なる不安に対してでした。
また、保険が適用されない胎児治療の費用がどのくらいかかるかもわからないので、
日常生活と家計を圧迫してまで、妊娠を継続すべきかどうか。
胎児治療を受けず、人工死産の選択をするのであれば、
羊水検査を受ける意味がないように思いました。
いくつかの選択肢が目の前にある。
でも考えても考えても、何を選択していいのかわかりません。
結局、思考停止的に、勧められるがまま、決断を先延ばしするかのように、
羊水検査を受けることにしました。
ひとつ言えることは、羊水検査を受けることは、より自分を苦しめるということ。
何があっても生む!という強い気持ちがあれば、検査結果は役に立つように思います。
ただでさえ体調不良、つわりで気持ち悪く、頭もぼーっとして考えられない状況下で
痛い検査を受け、短期間での重い決断を迫られる。
過酷な体験でした。
羊水検査を受ける。
7月中旬、17週0日に羊水検査を受けます。
16週では卵膜が浮いた状態にあったため、それでは針が入らないということで、
検査を受けられませんでした。
羊水検査を受けるのは、実は2回目です。
一人目を妊娠したときは中国に住んでいたので、あちらの国で妊婦健診を受けていました。
今年から廃止された一人っ子政策。当時はまだ国のきまりとしてありました。
中国では、妊婦健診メニューにクアトロテスト(母体血清マーカーテスト)が入っているんです。
採血がクアトロテストに使われているなんて知らなかったので、ある日いきなり
「血液検査の結果、ダウン症の確率が50分の1」
と告げられた日には、それはそれは驚きました。
クアトロテストで50分の1という確率がでるのは相当リスクが高いので、
確定するために羊水検査を受けた方がいい、と医師にすすめられ、
中国で羊水検査を受けることになったのです。
その時も、「結果が異常ありだったとしても、どうしたらいいんだろう。。。」
と同じように悩みました。
忘れもしない、中国での検査当日。
指定された時間に指定された場所に行くと、20人くらいの女性が集まっていました。
一人ずつ名前を呼ばれ、部屋の中に入っていきます。
他の人は廊下で待機。
一人あたり10分くらいの時間で、部屋の中から傷口を押さえつつフラフラと出てきます。
その瞬間、次は誰が呼ばれるんだろうと、廊下に緊張感が漂います。
私が呼ばれたとき、周囲の憐れむような視線に見送られながら、
部屋の中に入っていきました。
寒々しい部屋の中心に、手術用のベッドが一台。
その周りを取り囲むように、医師や看護師が10名ほどいて、
ベッドに横になると、すぐに長い針をもった医師が近づいてきました。
そしてそのまま羊水を抜かれ・・・
「え?麻酔しないの?!」と思ったときには、すでに針を刺されていました。
その医師が、針を刺している状態で
「あなた日本人でしょう?私のおじいさんは戦争のとき日本人に殺されたのよ。
今こうして、日本人のために施術していると知ったら、ご先祖様に顔向けできないわね」
と恐ろしいことを宣います。
普段は言い返す私も、針が刺さっているし気力が失せて、小さく
「不好意思・・・(申し訳ない)」とつぶやくと、医師は「冗談よ」とほほ笑んでいました。
施術後は隣の部屋に移動し、1時間安静にして、異常がなければそのまま帰宅です。
ベッドが数台あったのですが、人数が多すぎて、
横になるどころか座るところを確保するので精いっぱい。
結果、染色体異常はなかったのですが、クアトロテストは意味ないなーと思いました。
そんな過酷な羊水検査を受けていたので、
検査自体には身構えることなく、当日を迎えました。
だって日本は麻酔をしてくれるんでしょー?と。
ところが、痛い。
麻酔も痛ければ、検査の針が入るのも物凄く不快。
日本では、エコーを確認しながら、針を刺す場所を丁寧にみてくれるし、
施術後は1時間くらい、看護師さん付き添いのもと、その場所で横になっていました。
中国では適当な場所に刺してたし(勘?!なのか?!)、
終わったら「ハイ!次!」みたいに追い出されたなぁ。。。
それでも、麻酔をしなかった中国式の方が痛くなかったのは、
羊水検査の施術数の圧倒的な差のたまものなのかもしれません。
それから2週間後の7月末、染色体異常なしの結果が出ました。
検査の前の日、すでに胎動を感じていたこともあって、
「明日は長い針を刺すからね!よけてね!動かないでね!」
とお腹の赤ちゃんに向けて念力を飛ばしました。
施術中は底の方に沈んでまったく動かなかったので、17週でもう心が通じるのかと
命というものを不思議に感じた出来事でもあります。