産後うつを仏教的に言ってみる。

ここのところ、体も心も調子が悪い。

帝王切開の傷は疼くわ、股関節のグラグラしたかんじで歩きにくいわ、

肩こり、頭痛、倦怠感。慢性疲労。

毎日が寝不足。

ストレス発散のための時間を割けるわけもなく、

「こうしたい」という思いは自分で、ときに周囲によって「母親なんだから我慢しないと・・」

と打ち消されてしまう。

 

産後うつは不可抗力的に突然やってくる。

産後、NICUに通い詰めで、退院後のバタバタしていた時期は良かったのですが、

一ヶ月を過ぎてほっとして落ち着いた頃、

ぼーっとした頭で育児という日々のルーチンを繰り返しているうち、

気が付くと、自分の心に陰りがみえ始めました。

 

人の何気ない一言にものすごく傷ついたり、

自分が価値のない人間のような気になったりして、

油断すると涙が滝のように落下して水しぶきをあげています。

まさに立入禁止区域。危険地帯。

 

普段だったらしないようなミスを繰り返し、記憶力も注意力も散漫。

保育園の準備物も忘れるし、親としての役割もきちんと果たせず、

子どもたちにも多大な迷惑をかけているように思い、

「私みたいなダメ親に育てられてかわいそうに。。。」

「どうせ私なんて・・・」

「わたしのせいで・・・」

という言葉が消しても消しても頭のなかに浮かんできて、自分を責めまくる。

 

自分が何者なのかわからなくて、

自分の居場所がどこにもないような気分で、

みんなに批判されているような気がして、

自分が周りにとっても迷惑をかけているような。

・・これって、もしかして、産後うつ?

 

産後うつをググってみると・・

産後うつ病は産後2週間~3週間以降に発症するといわれています。(母乳育児の場合はさらに卒乳後数ヶ月は注意を要します。)
期間は数ヵ月~約1年。(さらに長引くことがあります。育児の手が離れる3,4年後まで続いてもおかしくありません。産後うつ病に限らず、昨今うつ病自体が長引く傾向があることも見逃してはなりません。)

 

一般的に言われている症状としては、

1.気分がひどく落ち込む
2.今まで関心があったものに対して興味がわかない

●いつも疲れているような気がする
●あまり眠れない
●何かに対して不安な気持ちになることがよくある
●いらいらする
●将来に対する希望がもてない
●集中力や記憶力が弱くなったと感じる
●自分を責める
●食欲がなくなる
●子供や夫に愛情を感じられない     というもの。

 

普段の私は、自己肯定感が人一倍強い方だと思います。

どんな局面でも深刻になることなく、「ま、なるようになるかー♪」というタイプ。

いつだって冷静沈着。

というのがスタンダードな姿勢です。

そんな私に押し寄せる自己否定の嵐と、

自分の体と心をコントロールできない困惑。

産後うつはどんな人にでも、突然やってくるのです。

 

そこで思い出した釈迦の降魔成道

不安、悲しみ、いらだち。

押し寄せる負の感情から逃れようとしても逃れられない。

この正体は一体、何者なのか?

もしかしたら、釈迦に次から次に襲いかかった悪魔と似ているんじゃなかろうか。。。

 

釈迦が「悟りを開くまで立たない!」と堅い決意のもと菩提樹の下で瞑想にふけっているとき、

それを邪魔しようと悪魔が襲来します。

悪魔の名前は、マーラ(死の神)、ナムチ(解脱をさまたげるもの)、カンハ(黒きもの)、

アンタカ(死神)、パーピマン(悪しきもの)、カーマ(欲望)、クッピパーサー(飢渇)、

ティーナ(怠惰)、ミッダ(睡眠)、ビール(恐怖)、ヴイチキッチャー(疑惑)など。

つまり人間がもっている恐怖、欲望、嫌悪、不安、苦悩そのものです。

崇高なお釈迦さまは、これらの悪魔、すなわち煩悩を克服して悟りを開いた

というのが、「降魔成道」という仏教のお話。

程度の差こそあれ、私の中で次から次に浮かんでくるマイナスの考えは、

降魔成道に出てくる悪魔をイメージさせるものでした。

 

釈迦が悟りを開いたのは、12月8日。35歳のとき。

私が出産したのは、12月9日。35歳。

なんとも親近感を覚えます(無理やりすぎるか・・・)。

悟りに至るまでの釈迦は、苦行を重ねて限界まで肉体を痛めつけました。

出産も体に大きな負担があります。

体力が十分に回復しないうちは、負の感情が押し寄せるのも致し方ないこと。

釈迦だってそうだったんだから。

 

私に襲いかかってきた悪しきものの正体は、

社会や周囲に承認されたいという人間の根源的な欲求なんだと思います。

その欲求を満たすのではなく、否定するのでもなく、

打ち消そうとするのでもなく、見ないふりをして誤魔化すのでもなく、

「あるものだ」と受け入れた上でマクロな視点で物事をみる。

とらわれている自分に気づいたとき、心はふっと軽くなります。

 

よくある話で、私も実際に言われたんですけど、

「私たちのころは女が育児するのが当たり前。今の人たちは・・」とか

「働きたいのはわかるけど、産んだんだからねぇ」など。

けっこうショック受けます(笑)。

誰かに誉められたくて育児しているわけではないけど、

「頑張っているね」の一言で、どれだけ気持ちが楽になることか。

周囲の寄り添いが一番だなーと思うのです。

 

産後うつは、重症化する前に誰かに相談するか、専門医を訪ねてくださいね。

とことん自分を甘やかしてもいいんです!

 

【仏像ミニ知識】

右手を地面にまっすぐ指している姿は、降魔成道のシーン。

なのでそういう仏像を見たときは、

「これは釈迦像ですね。フフッ」とつぶやくとそれっぽくなります。