遺伝子をつきつめると色即是空である

息子と向き合っていると、ある種の独特な、

宗教的な感慨にふけってしまいます。

冬の星空を見上げて、未知の宇宙に思いを馳せている時のような気分。

または、道端に落ちている石を拾ってよく観察してみると、

ものすごく小さな粒子が無数にあって、

その粒子の集合体としての石に神秘を感じてしまうような。

 

 

胎児胸水が自然治癒して、

在胎32週で見つかった先天性疾患は生後すぐの手術で根治して、

その10日後、NICU入院中に別の疾患が見つかりました。

その疾患について説明を受けたとき、無知だった私は

主治医の先生にこう聞きました。

「染色体に異常はなかったのに、どうして疾患が多発するのか?」

 

先生はこう答えました。

「染色体の検査でわかるのは、ごく一部の疾患です。

13トリソミーとか、ダウン症とか、有名ですよね。

染色体の数や形が正常でも、その中の遺伝子の異常が原因で

先天性の疾患は起こり得ます。

その先天性の疾患は、生まれる段階でわかる人もいれば、

大人になって発症する人もいる。

生涯、何も起こらない人もいる。

でも、誰もが持っているものなんです」

 

誰もが先天性疾患を抱えながら生きている。

染色体異常は、本棚に一冊本がないとか、本が欠けている状態。

遺伝子疾患は、本の中の、どこかの箇所が誤字脱字している状態。

 

 

かかりつけの病院は、息子の場合は、とにかく体重を増やせば首もすわる

と言っていたけど、体重が増えても、1歳を目前にしても

首がすわる気配がない。。。ということで、

その子の顔を見るだけで、「○○症候群」と当てることができる

生き字引のような先生がいるということで、紹介してもらいました。

 

生き字引先生は、温厚で誠実そうな、根っからの研究者

という感じの方です。

息子を見ても、症候群名は口にされませんでした。

 

染色体検査には、通常の検査よりもより詳しく

遺伝子レベルで見ることができる

マイクロアレイ検査というものがあり、それを受けました。

それで、結果は「染色体異常なし」。

 

 

そんな子には、こういうのもやっていますよーということで、

 

 

診断のつかない子どもたちと、その家族のために

原因不明で治療の進まない子どもたちをゲノムで救う。

という「小児希少・未診断疾患イニシアチブ」というプロジェクトに

参加しました。

その基幹病院からは、今まで100人を検査に出して、

結果が返ってきたのは2割ほど。

あとの8割は原因不明のままだそうです。

その2割も、同じような疾患が世界に数人いる程度。

もしくは世界初か。

というレベルの話です。いやぁ、来るとこまで来たなという感じ。

IRUD親の会とか、立ち上げてくれないですかね。

 

生命というのは、不思議な現象ですね。

健常者とか障害者とか、そういうものはあくまで表層的な状態で

いつ変わるやもしれない、仮の姿なんだとしたら、

実体はどこにあるのか。目には見えない遺伝子?

 

結論は色即是空ということで。