展覧会とバリアフリー

私は年間に結構な数の展覧会を見に行っていますが、

会場内でベビーカーを押している人にあまり会いません。

平日・土日、午前・午後・夕方などランダムに行くのですが、

いつ行っても見かけません。

たまーに見かけると、「めずらしいな」と思ってしまいます。

というか、私はよく下の子を連れて、ベビーカーを押して行くのですが、

それもめずらしいのかもしれません。

 

会場が狭かったり、人がそこそこ入って混雑していたりすると、

ベビーカーを使うのはまず無理だし、抱っこ紐の方が断然よい。

赤ちゃんを抱っこしている人は、確かにいます。

小回りがきくし、赤ちゃんをあやしながら見れるので抱っこはいいなと思います。

(重くて親は疲れる、という点はありますが・・・)

 

でも、うちの子みたいに体が不自由で抱っこ紐が使えない子は

ベビーカーを使う以外ありません。

ベビーカーを押しながらだとなかなかケースに近づくことができず、

作品をゆっくりと鑑賞することができない、ということもあります。

そこまで無理して、展覧会を見に行かなくてもええじゃないか、

ということになるんだと思います。

 

そもそも、子連れでの鑑賞って難しいですね。

美術館・博物館には、静かに鑑賞しなくてはいけない、という暗黙のルールがあります。

だから、急に泣き出したり騒いだり、

声を殺すことなく「ままー」と言ったりする小さな子どもは、

自ずと美術館とは縁遠い存在になってしまうのかもしれません。

 

しかし、「静かにしなくてはいけない」というのは、

実はルールやマナーではなくて、同調圧力なのではないかと思います。

美術館・博物館にとって、もっとも大事なことは作品の安全を守ることであり、

走ったり、暴れたり、飲食をしたり、作品を害するおそれのある行為は

慎むべきかと思います。

 

また、中高年の女性に多く見られるのですが、

人の前に割り込んで見ると言う行為。これは明らかなマナー違反だと思います。

(正倉院展なんか特に多いグイグイ系のおばちゃん。。。)

子どもが少しぐらい声を出したり、ぐずったりしても、

マナーに反しているわけではないので、暖かい目で見守っていいように思います。

 

多くの美術館・博物館では、車椅子用のスロープやエレベーターの設置など

物理的なバリアフリーは進んでいます。

しかし、意識のバリアフリーには繋がっていないように思います。

障害児を美術館・博物館で見かけたことないのは、

介助者からしても、行きにくい場所なんだろうと思います。

バギーを会場内で押して鑑賞することの困難さ、

「静かに鑑賞」と言う圧力下での音の問題(急な発声や、呼吸器などの機械音)。

障害をもつ子には、社会教育が十分に行き届いているとは言えない現実があります。

教育施設である博物館が、今後取り組んで行くことができるテーマのように思います。

 

時間を消費するための鑑賞ではなく、

次世代の創造につながるための鑑賞教育を、と考えたとき、

やはりすべての子どもに優しい施設であると良いなと思います。

意識をバリアフリー化すること。その意識の醸成がいるのかな、と。

 

Photo by garyullah